言の葉研究所

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本当の幸せとは。槇原敬之「ただただ」が、ただただ名曲

槇原敬之のアルバム「Design & Reason」に収録されている「ただただ」という曲が、非常に耳に残る名曲。

 

アップテンポの爽やかなメロディー、サビ部分で入るコーラスなど、「ああ、マッキーだなあ」「マッキーのファンやっててよかったなあ」と改めて感じさせられてしまった。優しい曲調、そして優しい歌詞。安心して聴くことのできる、マッキー節全開のナンバーである。

 

この曲のサビ部分の歌詞は次のようになっている。

 

世界がどうだとか
他の人がどうだとか
それも大事だけど
今日は君と僕が
同じ時に同じ空
見て綺麗と思えた
そのことが嬉しかった
ただただ

 

人は高尚なものを求めたがる。高尚なものが正しい道と信じ、高尚な生き方をしようと努力し、高尚な人を偉いと感じたり、逆にそうでない人を蔑んだりもする。

 

マッキーこと槇原敬之さんは現在、歌手生活において二度目の薬物による有罪判決を受け、執行猶予期間中である。

一度目の薬物による逮捕劇の後は無事に復帰を果たした。多くの反省とともに彼の考え方は大きく変わり、楽曲や歌詞も大きく変わった。これまでの恋愛ソング等から一変し、人としての生き方や考え方に焦点をあてたような楽曲が多くなった。それこそ、俗世間に惑わされずに「高尚な生き方をしよう」という彼の意志を感じた。

 

しかし、この曲はただ目の前にいる「君」と「僕」が、同じものを共有した。そんな些細な幸せがただただ嬉しかったんだ、という原点に返るかのような歌詞になっている。

 

正しい道を追い求めたり、難しいことは色々あるけれど、いまこの瞬間に人と何かを分かち合える。それが、幸せだったのかもしれない。そんな素朴なメッセージである。

 

これを見て、私は「夢を叶えるゾウ」でおなじみの水野敬也さんの本の一節を思いだした。

 

内容を立ち読みしただけで一部しか覚えていないが、次のようなストーリーだった。

 

とある、会社員をしているしがない男の話。

彼は現状に不満を持ち、いつか成功したい、夢を叶えたいという思いはありながらも、能力も勇気もなく、悶々とした毎日を過ごしていた。

自分の人生は、つまらないものだと思っていた。

 

そんな中、彼は近いうちに天国に旅立つことが決まった。

明日には死んでしまうくらいの早さで、人生に幕を下ろすことが決まった。

 

そこで彼は思った。

前に、スーパーで材料を買って、鍋をして食べた。

些細な幸せだが、おいしかった。あのおいしさを、死ぬ前にまた味わいたい。

そんな風に思うと、日常の些細なことが、とても幸せに思えた。

 

自分の人生はつまらない人生だと思っていた。

つまらない人生だと思っていたが、実は、その人生は幸せで輝いていた。

死の淵において、つまらないと思っていたこの人生を続けたいと、はじめて思った。

自分の人生はつまらない人生なんかじゃなく、幸せな人生だったんだ。

 

記憶違いがたくさん含まれていると思いますが、おおよそこんなストーリーです。

 

いい話ですよね。私は立ち読みでしたけれどウルッと来ちゃいました。

 

↓確かこの本だったかと…

 

 

思わず敬語になってしまいましたが、このマッキーの「ただただ」も、日常の些細な幸せがただ、嬉しかったんだという、それが本当の幸せだと気が付くほどに、思わす泣いて噛み締めたくなるような幸せを指しているように思います。

 

マッキーが同じものを共有してただただ嬉しいと感じた。この「ただただ」は、もう言葉に表現できないくらい、彼の中でじんわりと感じられたもので、主人公の目からは思わず涙がこぼれている…そんな情景が浮かんできます。

 

そんな泣ける名曲「ただただ」、ぜひ多くの人に聴いてもらいたいなと思いました。